インフルエンザ予防接種             (2003/11/9)



  2003〜04年の冬にかけては、SARSとインフルエンザの同時流行に対する警戒が必要です。重症急性呼吸器症候群(SARS)は、SARSコロナウィルスを病原体として、主に飛沫感染で伝染すると考えられています。その主な症状は、38℃以上の高熱、痰を伴わない咳、息切れと呼吸困難などで、胸部レントゲン写真で肺炎の所見が見られます。症状がインフルエンザの症状に良く似ているため、混乱を招く恐れがあります。その為、インフルエンザワクチンの接種を受けることが望まれています。
 インフルエンザの予防に対する最も確実な方法はワクチン接種です。ワクチンを接種した人の多くは、インフルエンザが流行しても罹りにくく、罹っても症状は軽く、期間も短く済みます。ワクチン接種を受けてから
インフルエンザに対する抵抗力がつくまでに2週間程度かかります。また、その効果が十分に持続する期間は5ヶ月間とされています。その為、ワクチン接種はインフルエンザの流行が始まる前の10月上旬から12月中旬までに行なうのが望ましいとされています。

ワクチンを積極的に接種すべき人は、
 1.
合併症を起こしやすいハイリスクグループ:65歳以上の高齢者、老人施設入所者、慢性の肺疾患・心疾患・糖尿病を含む代謝疾患・腎疾患等の基礎疾患を有する成人及び小児。
 2.
ハイリスク者にうつす可能性のある者:同居家族、医療施設の医師・看護師・その他医療従事者、老人施設などの職員、ハイリスク者の在宅看護に従事する者。
 3.その他
予防的措置により社会的メリットがある者:勤労者、受験・試験などをひかえた学生、寮などで共同生活をしている者。
 
 尚、高齢者の場合市から補助が出ます。


   白内障の手術時期                 (2003/9/28)


 今年の6月、新聞で「白内障治療薬の科学的根拠なし」という報道がありました。これには患者さんも驚いたようですが、我々眼科医にも大きな衝撃を与えました。元になった研究班の報告によれば、過去の研究報告や論文の内容を検証した結果、点眼薬については有効といえる科学的根拠はなく、今後現在の科学レベルと方法で再評価する必要があるということのようです。(点眼薬は無効と言う根拠もまだないようです。)漢方薬やビタミンC,ベータ-カロチンなどの内服は無効で、唯一科学的根拠があるのは手術ということになっています。
 点眼薬について、メーカーの1つである千寿薬品の見解は、こちらを御覧下さい。

 では、
白内障手術は何時行なうのが良いのでしょうか。
以前(20〜30年前まで)は、見えなくなるまで待つというのが一般的でした。その後、術式の変遷や新しい技術・素材・薬品の開発により、現在では白内障手術がほぼ確立され、眼内レンズ挿入によって質の良い視力が得られるようになりました。しかし、自らの水晶体で見る視覚の質にはかないません。したがって、
見ることに不便を感じないうちに手術を受けることは決してプラスにはなりません。
 
 一方、不便性は人それぞれの生活や仕事・環境における視力に対する要求度や必要性が異なることから、一律に視力によって手術時期を定めることはできません。しかし、白内障の混濁型によって進行度や視覚への影響は異なるが、視力とコントラスト感度、グレア、視野、融像能力などの客観的成績から分析すると、
視力0.5が手術の適応目安になるようです。
 当然のことながら、
患者さんの手術を受けたいという意欲も大切で、手術の必要性、手術方法や合併症など手術による有益性と危険性を正しく理解して、手術時期の決定の判断材料として下さい。
 
尚、前記の新聞報道・研究班の報告についての解釈は、私の個人的なものです。
手術時期については、ラジオたんぱ医学講座(独協医大 小原嘉隆教授)を参考にしました。


  紫外線と目                         (2003/7/21)


これから夏にかけて、ご家族や友人と海や山へ行楽に行かれる方が多いと思います。ところで,最近話題になることが少なくなりましたが、オゾン層破壊による紫外線の障害も気になります。皮膚の日焼けは良く経験しますが、目にも色々な障害を起します。

 急性の角結膜障害としては、砂浜や雪原等の照り返しによる障害があります。「雪眼」がこれに相当します。また、溶接や殺菌灯等の人工的な紫外線による角結膜炎は「電気性眼炎」と呼ばれています。紫外線に暴露後数時間後に両眼の眼痛、流涙、羞明、開瞼困難等の症状が出ます。
 また、慢性の太陽光、紫外線暴露は、結膜の翼状片、瞼裂斑、悪性腫瘍の発生率を高くします。
 白内障(水晶体の混濁)は主に加齢によるものですが、水晶体が網膜に対して紫外線、赤外線のフィルターの役割をしていることより、紫外線の吸収が蓄積して白内障の進行を加速すると考えられています。
 最近、増加している加齢黄斑変性症は、統計的には、紫外線に限らず、強い光環境にあった人、例えば屋外レジャーを好む人に多く認められています。また、若い頃からテレビ、ゲーム機、パソコンなどを凝視している世代が高齢化した時、加齢黄斑変性症の発症が将来更に増えるのではないかという危惧もあります。

 紫外線から眼を守り障害を予防するには、サングラス、ゴーグル,つば付きの帽子,日傘等の使用が有効です。ちなみにプロ野球のデーゲームの時、目の下の頬に黒い墨を塗っている野手がいますが、これで下からの照り返しを少なくして、眩しさを和らげているそうです。
 サングラスの場合は,その色や濃淡だけにとらわれず,それぞれの分光透過特性を確認することが大切です。光障害を中心に考えると紫外線と500nm以下の可視光線を効率よくカットするものが良いといえます。

 紫外線は,生体に害を及ぼすだけでなく,殺菌,ビタミンDの形成,カルシウム代謝調節と骨形成等色々な効用がありますので,しっかりと目は防護して、適度な日光浴をお楽しみ下さい。

  
(武蔵村山市報「市民の健康」の原稿に、一部加筆したものです。)


    ソフトコンタクトレンズの消毒             (2003/6/22)


 10年位前は、コンタクトレンズと言えば酸素透過性のハードコンタクトレンズが主流でしたが、最近はソフトコンタクトレンズ、特にディスポーザブルレンズが普及してきています。その一方で、装用感の良さや手入れの簡便化と共に、安易な選択や不適切な使用法により、様々な眼障害が増えて来ています。

 最近のソフトレンズは吸着しやすく、特にドライアイ、長時間装用では注意が必要です。本来、角膜とコンタクトレンズの間に存在すべき涙液層が消失して、酸素供給が低下するばかりでなく、角膜上皮障害、急性結膜充血、角膜変形などを起こします。また、感染症を発症し易い環境となり、角膜浸潤、角膜潰瘍、眼内炎へと進展することもあります。
 最近普及しているコールド滅菌は消毒力が弱く、使用法を誤ると不完全な消毒となり、感染症を引き起こし易くなります。
そこでこのようなトラブルを防止するには、次のような点に気を付けて下さい。

1.
こすり洗いをする。こすり洗いをすることにより、アレルギーの原因の1つでもあるレンズに付着した汚れが落ち、円滑なレンズの動きが得られます。特に、汚れの強い人や従来型のソフトレンズでは、専用のクリーナーによるこすり洗いが必要です。
水道水や自家製保存液でソフトレンズをすすぐことは厳禁です。アカントアメーバ−角膜炎の原因となります。

2.レンズケースの管理、特にマルチパーパスソリューションでは
毎日レンズケースの洗浄と乾燥が重要です。これを怠るとレンズケース内に微生物が繁殖して感染症を招きます。1〜3ヶ月に1度の定期的交換も必要です。

3.ドライアイ対策。防腐剤の入っていない
人工涙液などの併用、症例によっては涙点プラグが必要な場合もあります。できるだけ動きが良いレンズを選択し、長時間の装用・連続装用は厳禁です。


  糖尿病眼手帳について
                                (2003/5/11)


 この程、日本糖尿病眼学会の責任において、『糖尿病眼手帳』が作成され、協賛企業のご好意により医療機関に無料で配布されています。
 
 糖尿病は、生活習慣病の1つとして、最近患者さんが増えてきています。医療の進歩により、糖尿病自体で死亡する事は少なくなりましたが、様々な合併症、特に3大合併症と言われる、
網膜症・腎症・神経症が問題になってきます。
 糖尿病のコントロールが悪い患者さんが来院しなくなったと思ったら、壊疽のため片足を切断してある日突然車椅子で来院されたり、最近顔が浮腫み出したと思ったら、透析を開始することになったと言うことは日頃経験します。また、糖尿病の治療を受けず、夜な夜な飲み屋さんを渡り歩いている人が、飲み屋さんで突然心筋梗塞で死亡したという話も聞きます。
 
 
網膜症は、現在成人の中途失明の原因の第1位です。糖尿病網膜症の専門家の中には、最近の硝子体手術を始めとする眼科的治療の進歩により、きちんと治療すれば網膜症で失明することはなく、読書可能な視力を維持できると言う先生もいます。しかし、糖尿病が進めば失明することがあることを知らない患者さんも現実にはいます。
 そこで、内科で糖尿病と診断された方は、是非眼科を受診して、この糖尿病眼手帳を受け取って、
定期検査や治療の大切さを理解して頂きたいと思います。

手帳の内容は、1)眼科受診のススメ、2)患者本人の記録、3)連携医療機関の記録、4)糖尿病の診断基準、5)糖尿病網膜症病期分類、6)経過表、7)メモ、8)お役立ち情報 『おもしろ健康雑学コラム』です。

 日本糖尿病協会発行の『糖尿病健康手帳』等と併せて持ち、自分の糖尿病のコントロール状態や目の状態を把握して、
中断・放置することなく定期検査を受けましょう。いつも患者さんには、糖尿病は自覚症状が出た時はかなり重症で遅いので、自覚症状がない今のうちに内科の主治医と良く相談して、コントロールをしっかりやりましょうと言っています。
(医者があれこれ言っても、結局は
患者さん本人の自覚と努力がなければ上手くいきません。)

      (尚、糖尿病手帳の写真の掲載は日本糖尿病眼学会の許可を得ています。)


     眼鏡の医療費控除について             (2003/2/16)


 確定申告の時期になりましたが、眼鏡の購入費用は、一般的な近視・遠視・乱視の矯正および老視のためのものは医療費控除の対象にはなりません。しかし、医師の治療を受けるため直接必要なものであれば医療費控除の対象になる場合があります。
 
 治療のために必要な眼鏡とは、
『疾病により治療を必要とする症状を有する者が、医師による治療の一環として装用する眼鏡』とされています。具体的な疾患名や治療を必要とする症状は厚生省健康政策局総務課長通知(平成元年9月20日当時)により指定されています。その為、眼科医の処方箋により眼鏡店で作ったもの全てが対象となる訳ではありませんが、眼科医の処方箋なしで眼鏡店に直接行って作った場合は控除になりませんのでご注意下さい。

 確定申告に当たっては、
厚生省(当時)で指定した処方箋(眼科医が交付)と眼鏡取扱店等が発行した領収書が必要です。眼鏡フレームについては、プラスチックやチタンなど一般的に使用されている材料であれば、特別に高価な材料を使用したものや特別の装飾を施したものなど奢侈にわたるものを除き、その購入費用は医療費控除の対象になります。
 
 具体的な疾病名は、弱視、斜視、白内障(術後)、緑内障(術後)、難治性疾患(調節異常、不等像性眼精疲労、変性近視、網膜色素変性症、視神経炎、網脈絡膜炎、角膜炎、角膜外傷(術後)、虹彩炎)になります。治療を必要とする症状
や治療方法も各疾病毎に決められていますので、一般の方が勝手に判断することは難しい為、対象になるかなど、詳しい事は主治医にお尋ね下さい。

また、確定申告、医療費控除などについてご不明な点はお近くの税務署へお問い合わせ下さい。


    スギ花粉症について               (2003/1/20)


 1月16日東京都は今年のスギ・ヒノキ花粉の飛散予測を発表しました。これによると、昨年よりはやや少ないものの、平年より多くなる見込みです。花粉飛散が始まるのは2月5日から11日と予測されています。スギ花粉症の方は、4月末まで憂鬱な日が続きます。
 目・鼻の症状は結膜や鼻粘膜に付着する花粉量に左右され、花粉が少ない年は症状が軽くなり、一見直ったように感じますが、花粉症は自然に治ることは稀で、毎年繰り返します。具体的な薬物治療や手術(鼻の場合)については、他のサイトを参考にして頂き、ここでは、花粉曝露の回避や生活上の注意について述べます。 スギ花粉は飛散量が多く、花粉が軽いため、飛散距離が広範囲で、効果的な花粉回避は困難ですが、
次にあげる一般的な花粉回避はできる限り続ける必要があります。 
 
 1.花粉情報に注意する。 2.飛散が多い時は外出を控える。特に、日中の外出。 3.窓や戸を閉めて、花粉の侵入を防ぐ。空気清浄機を利用する。 4.布団などの寝具は外に干さないで、布団乾燥機を利用する。干した場合は、十分に花粉を払い落とす。 5.外出時はマスク・メガネ・帽子を使用する。花粉が付着しやすい表面がけばけばしたコートや衣類は避ける。 6.帰宅時は衣類や身体についた花粉を良く払い入室し、洗顔・うがいをし、鼻をかむ。 7.部屋の掃除を励行する。拭き掃除も。

 また、
生活上の注意として、 1.ファーストフードや加工食品の摂り過ぎに注意し、バランスの取れた食生活に改善しましょう。(1日30品目) 2.タバコやお酒、刺激性の強い香辛料などの摂取を控えめにしましょう。 3.皮膚を鍛え、ストレスをなくすように心がけましょう。 4.夜更かしや寝不足をなくし、規則正しい生活をしましょう。

 薬物療法ついては、薬物の効果と副作用には大きな個人差があります。その為、初めて治療する場合は治療薬の選択に際し、多くの選択肢の中から患者さんに最も合う薬物を患者さんと一緒に探す必要があります。その為には、医師と患者さんが良くコミュニケーションをとる必要があります。「何でも良いから、とにかくこの痒みを止めてくれ」という方が時々いますが、薬に頼らず上記の花粉回避や注意点を守り、自覚症状の状態や程度、何が困っているのか等、担当医師とよく話し合いましょう。
また、毎年発病する方は、
花粉飛散の2週間前から事前投薬を行なうことで、完全に症状を抑えることはできませんが、症状の発現を遅らせたり、程度を軽くすることができます。早めに、主治医に御相談下さい。
私も、「いつから内服するか」カレンダーと睨めっこしています。 


     ロゴマークについて            (2002/12/25) 
                       


 我輩はフクロウである。まだ名はない。 ・・と言うことで、おしきり眼科のロゴマークについてお話します。
今のロゴマークは2代目です。そもそもは、平成5年9月の開院時に看板作りをお願いした所で、『眼科は子供や老人が多いようなので、なんかマスコットがあればわかり易いよ。』と言われ、イラスト集を見せられたことに始まります。何か目が良い動物でもないかなと思い探していて、目に付いたのがフクロウです。フクロウと言えば、夜目が効いて、森の物知り博士と言うイメージがあったので、すぐに決まりました。
 当時はロゴマークと言うよりは、少し漫画チックなイラストでした。始めのうちは、何故フクロウなのか良く聞かれましたが、大した理由もなかったので、『なんとなく』と言うような返事をしていましたが、色々調べてみると、(幸)福を呼ぶ鳥・不苦労として縁起をかつぎ世界中で好まれ、フクロウグッズコレクターやフクロウ関係のショップが多いことがわかりました。
そんなことがきっかけになり、私のフクロウグッズのコレクションが始まりました。基本的には、高価な物は購入せず、旅行のお土産程度の比較的小さい物や出かけた先で偶然見つけて気に入ったものが主です。最近では、子供達や職員・知人からお土産として頂くこともあります。コレクションはいずれこのホームページにアップしたいと考えていますので、お楽しみにお待ち下さい。
 さて、2代目の現在のロゴマークは、平成9年9月に医療法人格の取得に伴い、アルファアーツのグラフィックデザイナーの阿津坂雅弘氏(熊本市)にデザインをお願いしました。当初はフクロウに関係ないロゴも考えましたが、ある程度は初代のマークが浸透していたようなので、フクロウのマークも考慮して頂きました。この時は、元野鳥の会会員として、絶滅の危機にある『しまふくろう』をモチーフにするようにお願いし、現在のロゴマークが出来上がりました。