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  ロービジョンケアについて    (2008/12/30)


ロービジョンとは社会的・教育的弱視の意味で、WHOでは、両眼の矯正視力が0.05以上0.3未満と定義しています。簡単に言えば、眼鏡を装用しても日常生活に支障や困難を感じる人で、視覚活用の可能性が残っている状態です。

身体障害者手帳認定基準では視野障害の程度も考慮されていて、視力・視野障害の他にも色覚異常や調節障害などの機能障害を含めて、ロービジョンは「低視覚」と訳すのが適切だと思われます。
そして、視覚障害者の保有能力を最大限に活用し、QOL(生活の質)の向上を目指すケアが
ロービジョンケアです。

2000年の日本ロービジョン学会発足を期に、各地でロービジョンクリニックが開設されていますが、まだまだ数は少ないようです。

専門書の「ロービジョンケアの実際」によれば、基礎的なロービジョンケアには、眼科医療としての視機能の再評価、ルーペ等の拡大鏡や単眼鏡、拡大読書器などの補助具の選定と訓練、教育や社会保障に関する情報提供やカウンセリングなどの心理的な援助があります。実践的ロービジョンケアには、日常生活に関る訓練、歩行訓練、コミュニケーション訓練、職業訓練があります。

このように、眼疾患の治療から機能障害や能力障害の支援、社会的ハンディキャップの支援を含む生活全般に渡る支援をするロービジョンケアが求められています。その為には、眼科医、看護師、視能訓練士、メディカルソーシャルワーカーなどの医療関係者だけではなく、日常生活指導員、歩行訓練士、職業指導員などの教育・福祉関係者も含めて、お互いに積極的に連携・協力することにより、視覚障害者のQOL向上のための幅広いチームプレーが求められています。残念ながら武蔵村山市ではまだ体制が整っていないようです。

             (武蔵村山市報に掲載された原稿を一部手直ししました。)


    武蔵村山市眼科検診について   (2008/11/2)


 平成20年12月から平成21年2月にかけて、武蔵村山市では健康増進法に基づいた「眼科検診」が市内の4つの眼科で行なわれます。
 
 昨年度は基本健診の選択検査として眼科で眼底検査が行われましたが、今年度から特定健診に変わったため当市では眼科での検査ができなくなりました。これに変わるものとして、武蔵村山市医師会と市が協議した結果、眼科検診を行なうことになりました。
 
 対象者は、
市内の30歳以上の方で、現在眼科に通院・治療中の方は除きます。定員は400名です。希望者は11月14日までに往復はがきで市に申し込みます。受診票が届きましたら、ご希望の各医療機関で予約をして下さい。詳しい応募方法は市報「むさしむらやま」11月1日号に掲載されていますのでご覧下さい。
 
 検査内容は、視力検査(裸眼視力またはご自分の眼鏡の視力検査)、細隙灯検査、眼圧測定、眼底検査、眼底カメラ撮影を行ないます。失明原因の上位を占め、
眼の4大成人病といわれる「白内障」「緑内障」「加齢黄斑変性症」「糖尿病網膜症」が主な対象疾患となります。
 検診の結果、矯正視力測定や視野検査、蛍光眼底撮影等の更なる検査が必要な場合や治療が必要な場合は、その後保険診療により、検診を行なった医療機関や紹介された医療機関を受診することになります。
 
 糖尿病や高血圧症があり今まで眼科を受診したことがない方や家族や親戚に緑内障の人がいる方、喫煙している人や眼鏡を使用しても見にくい方は是非この機会に眼科検診を受けてみてはいかがでしょうか。


   学校生活管理指導表(アレルギー疾患用)について  (2008/6/28)


 平成20年度から学校におけるアレルギー疾患の児童生徒に対する取り組みを進め、個々の児童生徒について症状等の特徴を正しく把握する為の1つの手段として学校生活管理指導表(アレルギー疾患用)が導入されました。そこで、学校生活管理指導表(アレルギー疾患用)の活用のポイントを述べたいと思います。
 
 
管理指導表は、原則として学校における配慮や管理が必要だと思われる場合に使用されるものであり、次のように活用されることを想定し作成されています。
 1.学校・教育委員会は、アレルギー疾患のある児童生徒を把握し、学校での取り組みを希望する保護者に対して、管理指導表の提出を求める。
 2.保護者は、学校の求めに応じ、主治医・学校医に記載してもらい、学校に提出する。
 3.学校は、指導管理表に基づき、保護者と協議し取り組みを実施する。
 4.主なアレルギー疾患が1枚(表・裏)に記載できるようになっており、原則として1人の児童生徒について1枚提出される。
 5.学校は提出された管理指導表を、個人情報の取り扱いに留意するとともに、緊急時に教職員誰もが閲覧できる状態で一括管理する。
 6.管理指導表は症状に変化がない場合であっても、配慮や管理が必要な間は、少なくとも毎年提出を求める。記載する医師には、病状・治療内容や学校生活上の配慮事項などの指示が変化しうる場合、向こう1年間を通じて考えられる内容を記載してもらう。(大きな病状の変化があった場合はこの限りではない。)
 7.食物アレルギーの児童生徒に対する給食での取り組みなど必要な場合には、保護者に対し更に詳細な情報の提出を求め、総合して活用する。

 対象となるアレルギー疾患は、
気管支喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性結膜炎、食物アレルギー・アナフィラキシー、アレルギー性鼻炎の5つです。このうち気管支喘息や食物アレルギー・アナフィラキシーは緊急の対応を要する疾患で、特にアナフィラキシーは非常に短時間のうちに重篤な状態に至ることがありますので、常に準備をしておく必要があります。

 
取り組みプランは学校が立案し保護者と協議して決定するもので、1.アレルギー疾患のある児童生徒への取り組みに対する学校の考え方 2.取り組みの実践までの流れ 3.緊急時の対応体制 4.個人情報の管理および教職員の役割分担 5.具体的な取り組み内容が含まれています。

アレルギー疾患と関連の深い学校での活動としては、
動物との接触を伴う活動、花粉・ほこりの舞う環境での活動、長時間の野外活動、運動(体育・クラブ活動など)、プール、給食、食物・食材を扱う授業・活動、宿泊を伴う校外活動などがあります。
就学時検診や入学説明会、定期健康診断などの機会が出発点になると思いますが、随時必要に応じて学校にご相談下さい。

尚、学校生活管理指導表(アレルギー疾患用)は文書扱いになりますので、
医師の記入に際して文書料が必要になる場合があります。(金額は医療機関により違います。)
また、担当の学校医の場合は相当の配慮をするよう求められています。

   参考文献: 学校のアレルギー疾患に対する取り組みガイドライン 財団法人日本学校保健会


   結膜下出血とヒートショック  (2008/6/3)


 今年の冬は比較的寒かったせいもあり、結膜下出血の患者さんが多かった気がします。
結膜下出血とは、眼球の白目の部分の結膜下の小さな血管が破れて出血したもので、白目がべったり赤く染まります。多少、ゴロゴロしたり違和感があったりします。

 
原因としては、@眼局所の要因 A全身性疾患 B原因不明があります。

@眼局所の要因としては、1.眼外傷や手術による場合:出血以外に外傷や手術による他の症状を伴います。目を強くこすりすぎたり、睫毛や異物が入っても起こり得ます。2.急性出血性結膜炎や流行性角結膜炎による場合:痛みや目やに、涙が増えるなどの症状があります。

A全身性疾患としては、動脈硬化、高血圧、糖尿病、出血性素因(貧血、白血病、紫斑病など)、腎炎に伴って起こります。加齢現象による血管の弾力性の低下も関係していると思いますが、結膜下出血を繰り返す人は、内科での精査が必要になります。また、肝臓が悪い人も要注意です。また、マラリア、猩紅熱、ジフテリア、コレラ、発疹チフス、インフルエンザ、麻しんなどの急性熱性疾患でも見られます。

B原因不明ですが、誘因としてはくしゃみ、咳、過飲酒、月経、水中メガネのしめすぎ、夜更かし、寝不足や過労も考えられますが、次に述べる『ヒートショック』も関係していると考えています。
 原因は以上のように様々で、思い当たる誘因がなくても出血しますが、通常視力に直接影響はありません。

 結膜下出血の量や範囲にもよりますが、通常は3〜7日、長くて1〜2週で自然に吸収されることが多く、放置しておいてもいずれは吸収されます。治療法としては、原因がある場合はその治療。または出血が増えないように血管収縮薬や止血剤の投与、温罨法や温湿布、吸収促進の為の血栓溶解薬の結膜下注射などがあります。

 一方、
「ヒートショック」とは、急激な温度変化が体に及ぼす影響のことで、室温の変化によって血圧が急激に変化し、脈拍が早くなったりすることです。これは、人の身体は体温を調節しようとするために血管を収縮させるので、室温の変化によって血圧が急激に変化するために起こります。
冬場に、暖房の効いた部屋から寒い廊下やトイレに行く時に、思わず体が「ブルブルッ」とします。実はこの時、心臓に思った以上の負担がかかっているのです。これを「ヒートショック」といいます。高齢者や高血圧の人にとっては、心筋梗塞や脳血管障害などにつながり、命取りになりかねないとても危険なことです。

 今年の冬、TVのある番組の特集を見て、また個人的な経験からも心筋梗塞や脳梗塞とは逆に、寒いところから暖かい部屋に入って、急激に体が温まって血管が拡張した時に結膜下出血が起こる場合もあるのではないかと考えています。これは、髪をシャンプーをしてお風呂から上がって鏡を見たら赤かったという患者さんの話と良く一致します。
 いずれにしても、冬に限らず、これからの夏は冷房の効き過ぎに注意して、気温や室温の寒暖の差に気を付けて下さい。

             
地球温暖化防止の為にも、省エネで行きましょう!!

参考文献: 気になる結膜下出血 監修:慶應義塾大学医学部眼科学 小口芳久教授  参天製薬株式会社 
        有限会社南部建築ホームページ ヒートショック対策



   蛍光眼底造影撮影について  (2007/12/24)


 現在、当院で蛍光眼底造影撮影を行うときに、患者さんに渡している説明書を以下に示します。

レントゲン検査と勘違いされる方がいますが、この検査ではレントゲン(放射線)は使用していません
通常のフラッシュを使用した写真撮影と同じです。)



蛍光眼底造影撮影について

回行う『蛍光眼底造影撮影』について、その目的や必要性、方法、注意点などをご説明します。

この検査は、糖尿病網膜症、網膜静脈閉塞症、加齢黄斑症、中心性網脈絡膜症等の眼底疾患の診断や治療法の選択、特にレーザー光凝固を行う必要があるか、あるとすればどの範囲を治療するか、その時期や方法をどうするか決める為には欠かせない大切な検査です。
 この検査では、普通の眼底検査では分からない、網膜の血管に血液が正常に流れていないところや血管から血液が漏れているところ、網膜の下の脈絡膜から血液が漏れているところ等が分かり、
病気の診断や重症度の把握にも役立ちます。
 検査は、
腕の血管(静脈)から点滴でフルオレセインという蛍光色素(造影剤)を注入して、眼底を連続してフラッシュを使用して撮影します

 検査の前処置として、血圧を測り、瞳孔を開く目薬を点眼し、初めての場合は造影剤にアレルギーがないか皮内検査を行います。その後、皮内テストが陰性であれば、検査中の悪心・嘔吐予防の筋肉注射を行います。
尚、心臓、肝臓、腎臓の病気や高血圧や糖尿病のコントロールが悪いなど全身の状態によっては検査できない場合がありますので、当日身体の具合が良くない時は、お申し出下さい。

検査中に、まれに気分が悪くなったり、血圧が低下することがありますので、こちらでも確認しますが、そのような場合は早めにお知らせ下さい。
 
検査中は、両目をできるだけ大きく目を開けて、こちらで指示する方向を見るようにして下さい。また、助手がまぶたを開きますが、できるだけ瞬きはしないようにして下さい。ピントがあった綺麗で、隅々まで分かる写真が撮れるよう御協力をお願いします。

検査後は散瞳していますので、半日ほど眩しく・近くが見にくくなります。また、検査前の筋肉注射のため眠気を感じます。
検査後、色素の影響で
皮膚や尿が黄色くなりますが、約一日半程度で元に戻りますのでご心配いりません。

その他、分からない点は遠慮なく医師や看護師に御相談下さい。


    網膜光凝固と保険給付金     (2007/9/18) 


 最近、当院で以前に網膜光凝固を行った患者さんが、「遅くなりましたが生命保険会社に提出する『手術証明書』をお願いします」と、持ってくることが何回かありました。そう言えば、生命保険会社の契約者への説明が不十分で、本来支払われるべき保険金が支払われていなっかたという報道を目にしたことがあり、それを見直ししている為と思われます。

 
網膜光凝固術(レーザー凝固)は、健康保険では「手術」に分類されます。その為、入院はしませんが『手術給付金』の対象となるようです。網膜光凝固術の保険点数は、1.通常のもの(一連につき)は11,200点、2.その他特殊なもの(一連につき)は18,100点です。その為、3割負担ですと片眼の場合は 1.で33,600円、2.で54,300円、両眼の場合はその倍になり、高額になりますので、生命保険に加入されている方は、まず保険会社にご相談下さい。

 尚、「一連」とは、治療の対象となる疾患に対して所期の目的を達するまでに行う一連の治療過程を言います。そして左右別々に算定されます。また、『その他特殊なもの』とは、網膜剥離裂孔、円盤状黄斑変性症(加齢黄斑変性症)、網膜中心静脈閉塞症による黄斑浮腫、類のう胞黄斑浮腫および未熟児網膜症に対する網膜光凝固術並びに糖尿病性網膜症に対する汎光凝固術を言います。

 当院では、現在主にアルゴンレーザー(ブルー・グリーン)を使用して網膜剥離裂孔、網膜中心静脈(分枝)閉塞症、糖尿病性網膜症、中心性網脈絡膜症に対して網膜光凝固を行っています。また、閉塞隅角緑内障等に対する虹彩光凝固術(7,710点;これも保険金給付の対象になるかもしれません)も行っています。

 眼科では他に治療用として後発白内障に対し
YAGレーザー、加齢黄斑変性症に対しダイ(色素)レーザー、網膜光凝固として半導体レーザー、近視矯正のためにエキシマレーザー(自費)など様々なレーザーを活用しています。
 生命保険会社との契約内容により、給付金や条件は色々あると思いますので、是非保険会社にご相談下さい。


    大和会だより 51号 (2007.5.25発行) わが街のお医者さん   (2007/6/30)


 大和会だより 51号 (2007.5.25発行)の「わが街のお医者さん」に「おしきり眼科」が掲載されました。

 PDFファイルです。下記のリンクをクリックして下さい。 

               img002.pdf へのリンク


       基本健康診査による眼底検査      (2007/4/22)


 2007年4月から武蔵村山市では、老人保健法による基本健康診査に伴う眼底検査(選択検査)を市内の眼科で行うことが出来るようになりました。 但し、一次医療機関である内科などで、眼底検査を行う必要があると医師が判断した場合に眼科に検査を依頼します。 (従来どおり一次医療機関で眼底検査を行う場合は必要ありません。)

 眼底検査の必要な方は、一次医療機関で「
基本健康診査に伴う眼底検査依頼書兼判定書」を記入していただいて、事前に眼科の予約を取ってから、その依頼書を持参して来院して下さい。検査終了後に、結果判定書をお渡ししますので、一次医療機関に提出して下さい。
 
原則として、両目の瞳を大きくする点眼薬を使用して眼底検査または眼底写真を撮ります。 瞳が大きくなる(散瞳)まで点眼してから20〜30分かかります。瞳が大きくなると眩しくなり、またピントを合わせる働きが麻痺しますので近くのものが見にくくなります。この状態が5〜6時間続きます。(それぞれの時間は個人差があります。)その為、自動車の運転に支障をきたすことがありますので、自動車でのお越しはご遠慮下さい。また、散瞳する眼底検査が初めてで、慣れていない方は片目づつ検査を行います。

 
眼底検査が必要な方とは、高血圧、高脂血症、糖尿病などの全身疾患を有する方や一次医療機関の医師が必要と判断した場合です。判定は、循環器疾患判定基準に従い「異常を認めず」「要指導」「要医療」の指導区分に分けられます。角膜の混濁、白内障や散瞳が出来ないなどの為、判定不能の場合もありえます。

 眼底検査の結果、視力検査、眼圧検査などの検査や治療が必要な場合は保険が適応になります。
保険証や医療券を当日持参頂ければ対応いたします。また、当院にかかりつけで、眼底検査以外の定期検査や投薬を希望する場合は、予約カード(診察券)もお持ち下さい。診察料と眼底検査料は基本健康診査で対応します。
 
尚、
基本健康診査は平成19年度で終了します。20年度からは新しいシステムの健診と保健指導が始まります。まだ詳細は決まっていませんが、特定健康診査の詳細な健診項目に眼底検査が含まれています。詳細が決まり次第、市や都の行政または健康組合などの保険者からお知らせがあると思います。