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  眼瞼下垂について   (2009/7/28)


 最近、瞼が下がってきたので、何とかして欲しいという方が増えてきました。その多くは、上眼瞼の皮膚が弛んで、垂れ下がった眼瞼皮膚弛緩症です。特に、視力や視野に影響がなければ、手術は必要がないようですが、影響が出てくれば余分な皮膚を切除する手術の適応になります。

 これとは別に、
眼瞼が開きにくく、眼瞼そのものが垂れ下がってくる病気が、眼瞼下垂です。原因は先天性と後天性があり、子供の眼瞼下垂の多くは、先天的な眼瞼挙筋の発育不全が原因です。瞳孔が完全に隠れている場合は、弱視になることがあるので、早めの治療が必要で、眼瞼挙筋を短くする手術を行います。
 後天性の眼瞼下垂では、
加齢により、瞼を開く筋肉と瞼本体をつないでいる腱膜が、徐々にはずれてきてしまう為に起こることが最も多く、他には筋肉や神経の麻痺、外傷、目の手術の合併症、ハードコンタクトレンズの長期使用などが原因になります。

 神経の麻痺や外傷の場合は、片方に起こりますが、加齢によるものでは程度の差はあっても、たいてい両方に現れます。下がった瞼が瞳孔にかかると、見にくくなり、視野にも影響が出ます。また、眼瞼下垂が徐々に進行すると、本人が意識しないで、瞼を開けるのに眉毛を上にあげたり、顎を突き出して視野の下方で物を見ようとしていることがあります。そのため肩こりや頭痛、慢性的な疲労を訴えたり、おでこのしわが増えたりします。

 治療法は、外れかかっている腱膜を筋肉につなぎ直したり、瞼とおでこの筋肉をつないだりと、原因に応じた手術を行います。

 余談ですが、寝不足や疲れている時に眼の下にクマができます。これは、瞼の皮膚は体の中で最も薄く、しかも皮膚の下に脂肪がなく、すぐ筋肉です。筋肉は多くの酸素や栄養を必要としますから、それらを供給するための血管が豊富です。疲れている時や体調が良くない時は、血液の循環が悪く、瞼の血流も悪くなり、鬱滞した静脈血が薄い皮膚を通して透けて見えるわけです。このクマを取るには、瞼の血流を良くするのが一番で、冷たいタオルと温かいタオルを交互にあてたり、軽くマッサージをしてあげるのが効果的です。

   参考文献: 目と健康シリーズ No.27 まぶたの病気とQOL 編集:川本 潔


      瞳孔について  (2009/3/29)


 瞳孔(瞳)とは、いわゆる茶目(虹彩)に囲まれた中央の黒目の部分で、ドーナツの穴のようなものです。その大きさは成人では明所で4mmぐらいですが、老人と新生児では小さく、2〜2.5mmぐらいです。年齢の他に、意識や覚醒、疲労の程度にも影響され、はっきり目覚めている時は、疲れた時、眠い時に比べて大きくなります。睡眠時は逆に小さくなっています。この瞳孔の大きさは、自律神経を介して瞳孔の周りを取り巻く瞳孔括約筋(縮瞳作用)とその周囲に放射状をなしている瞳孔散大筋(散瞳作用)の働きによって変化しています。 瞳孔の大きさや反応に異常が出る病気の多くは視神経や動眼神経などの中枢神経系や自律神経の病気です。

 その役割は、眼内に入る光の量を調節することで(対光反応)、カメラの絞りに相当します。明るいところでは小さく(縮瞳)、暗いところで大きくなります(散瞳)。光以外では、近くのものを見ようとすると瞳孔は小さくなります(近見反応)。精神的な刺激、すなわち驚き、怒り、恐怖、不安などの感情の興奮の際は大きくなり、三叉神経に疼痛刺激が加わると小さくなります。また、正常でも1mm以下の左右差が、10〜20%の人に見られます。
 
 眼科では、眼底検査の際、瞳孔を大きくする点眼薬を使用します。これは、瞳孔を通して目の奥の眼底(例えれば、卵の殻の裏側)を見る為に大きくする必要があるからです。また、虹彩炎やぶどう膜炎等で虹彩の安静を保つために治療目的で散瞳薬を使用します。遠視や近視の精密検査で使用するときは、調節を麻痺させて、屈折の程度を正確に測定するのが目的です。逆に、緑内障治療の為に縮瞳薬を使用することもあります。
 
 かつて、中世のヨーロッパでは、貴婦人たちが美しく見せる為に植物から抽出した散瞳薬を使用していました。これは、心理的に見る人に、瞳の大きな人はかわいく、美しく見えて、逆に瞳が小さいと冷たく、暗い印象を与えるからです。同じ絵画でも、瞳の大きさを変えることによって、見る人に与える印象がまったく変わってきます。
 散瞳薬を使用すると、瞳が大きくなり光量が増えるためまぶしくなり、調節が麻痺するので近くのものが見にくくなります。また、全身の副作用が出る劇薬もありますので、一般には使用できません。そこで最近では、茶目の部分を大きく見せるコンタクトレンズが販売されていて、外見を重視する韓国では売れているそうです。